最近では、ゲームはe-sportsと呼ばれるぐらい競技性が出てきています。そんな中で、最高の環境で対戦するためのゲーミングディバイスも様々な物が発売されています。特にゲーミングモニターは重要で、ゲーム機やPCから出力された映像を遅延なく表示できる性能が求められます。今回、ゲーミングモニターのASUS XG27UQを購入したのでレビューしていきます。


ゲーミングモニターに求められる性能とは


PCは当然のこと、PS5やXbox series Xなどの最新のゲーム機でも、4K画質での出力が標準となってきています。4K画質はこれまでのfullHDに比べて
4倍の画素数で表示するため、より高精細な画像でゲームをする事ができます。しかし、ゲーミングモニターは勝つための性能が求められるため、何よりも入力遅延が少ない事が求められます。入力遅延とは、ゲーム機などが出力した信号をモニターの内部で処理して実際に映し出されるまでの時間です。ゲームはモニターに映し出された映像に対してプレーヤーが反応するため、そもそものモニターの映像が遅れていたら、当然プレーヤーの入力も遅れてしまい不利になります。このため、なるべく入力遅延の無いモニタが求められます。

今回レビューするASUS XG27UQは、27インチ4K画質の高精細モニタでありながら、Rtings.comのレビューでは、入力遅延が極めて少ないゲーミングモニターとレビューされています。なお、XG27UQは、欧米では2020年夏に発売され、日本では半年以上遅れて2021年2月に発売となったモデルです。


モニターの性能の指標


画素数

上でも説明しましたが、画素数が多ければ多いほど、より高精細な画像を映すことができます。4KはfullHDに比べて4倍の画素数で表示するため、より細かい映像になります。遠くにいる小さな敵がfullHDのモニターで1ドットで表示される場合、4Kモニタでは4ドットで表示されます。逆に4Kで1ドットで表示される場合は、fillHDでは表示されません。FPSなどのゲームでは高精細な4K表示が有利になります。

フレームレート

動画は静止画の集まりで、1秒間に何枚の映像を映すことができるかという性能です。これを秒間フレーム数やフレームレートと呼び、単位はfps (frames per second)で表します。PS4世代までのゲームは60fpsで作られていました。PS5世代からは120fpsでゲーム制作できる性能となっています。PCではグラフィックボードの性能次第では、360fpsの表示もできます。PS5などの、家庭用ゲーム機では120fps表示が可能なモニタで十分です。

入力遅延

モニタのカタログスペックには掲載されていることはほとんどありませんが、上で説明したように、ゲーミングモニターにとっては重要になる性能です。対戦相手よりも一瞬でも早く反応する事が求められる、FPS(first person shooting)ゲームや格闘ゲームでは特に重要となってきます。
カタログスペックでは似たような項目に応答速度というものがあります。これは液晶が入力を受けてから映像を切り替えられる最小時間で、一般的には黒→白→黒と切り替える時間を表します。これが遅いと、1枚の映像に複数枚の残像が重ね合わされることとなるため、残像が多くなり見づらいモニターとなります。応答速度も小さい方がゲーム画面としては見やすくなります。
入力遅延は内部での映像処理にかかる時間も考慮されているのに対し、応答時間は処理後の液晶パネルのみの性能の数値となります。


HDMIの規格

現在の家庭用ゲーム機(PS5、Xbox series X)では4Kで120fpsの映像を表示することができます。これを表示するためには、HDMI2.1の規格で映像を出力しなくてはならないのですが、現在販売されているモニターでHDMI2.1に対応しているのはLGの42インチのモニターのみになります。XG27UQでも4K120fpsの映像はサポートされていますが、HDMIは2.0までしかサポートされていないため、display portを使用するか、VBRというHDMI 2.0規格で信号を圧縮する信号を使用する必要があります。ただ、家庭用ゲーム機では現在はVBRはサポートされていないため、4K120fps表示はできません。

私は主にPS5でPS4版の格闘ゲームで使用するため、入力遅延が少ないことが最優先です。ただ、今後のことや他ゲームで使用するために4Kモニタであればいいという選択で選びました。その際には4K60fspで表示するしかありません。


使ってみてのレビュー


ゲーム用モニターのEIZOのFS2333からの入れ替えです。サイズは23インチから27インチになったので大きくなり、映像は4Kになったので、きれいになりました。ゲームをするには27インチでは大きいとのレビューもネット上で見られましたが、ゲームセンターのアーケード筐体では32インチのモニターを使用しているので、それほど大きくはありませんでした。PCとの併用を考えれば、画面は大きい方が便利だと思います。
入力端子はHDMIが2個とdisplay portが2つあるので、十分です。端子部分にはカバーがあり、背面をすっきりさせることができます。

↑ケーブル接続部


↑ケーブルカバーで背面がスッキリします

付属のモニタースタンドは、今時のゲーミングモニターだけあって、スタンドの下面側にライティングのギミックがあります。モニターの背面にもライティングギミックがあります。スタンド自体は左右は長く背面は短い3脚タイプですが、モニターが重いためかスタンドの占有面積は広く、設置場所によっては注意が必要です。



↑下面にロゴを投影するライトを内蔵


付属のモニタースタンドを外してVESAマウントでモニターアームに設置することもできます。電源はACアダプターが別のタイプで、ACアダプター自体が大きいですが、ACアダプターからモニターまでのケーブルは細いため、モニターアーム内に取り回す場合は便利になっています。


↑VESAマウントにエルゴトロンのモニターアームを装着

操作は向かって右側の裏面にボタンとスティックが配されていて、直感的に操作できます。


入力遅延を測定

購入後、実際に入力遅延を測定しました。ただ、絶対値としての入力遅延の測定には特殊な機器が必要となるため、相対的な性能を測定する事にしました。ちなみにRtings.comではXG27UQの入力遅延は9.3msとの測定結果が掲載されています。FS2333の測定結果は掲載されていなかったため、どれだけ改善されたかを測定します。

相対的な入力遅延の計測は、分配器で2つのモニタに同じ映像が映るようにして、LCD Checkerというソフトでカウンターを表示させて、デジカメで1/1000秒で撮影します。撮影した写真で、遅れている方が、もう一方のモニタに対して入力遅延があると言うことになります。

まずは、写真編集用のSX2262WとXG27UQで比較してみました

↑左がEIZO SX2262W、右がASUS XG27UQ

この場合は、0.963(SX2262W)-0.997(XG27UQ)≒-0.034秒 つまり、XG27UQの方が0.034秒早く表示されているという結果になりました。一般的な秒間60フレームのゲームでは約2フレーム早く表示されているということになります。


現在のゲーム用モニターと比較

ゲーム用のモニターとして使用していたのは、EIZOのFS2333という2012年に発売されたゲーミングモニターでです。最新のゲーミングモニターであれば、入力遅延が少なくて、よりゲームで勝てるようになるはずです。このモニターより高性能であって欲しい!というわけで、FS2333と比較しました。


↑左がASUS XG27UQ、右がEIZO FS2333

結果は1/1000秒単位で同じ映像が表示されていました。つまり、入力遅延はFS2333とXG27UQでは全く同じとなりました。ゲームで勝てるモニターを購入したつもりが、元々、かなりの高性能モニターでプレイしていたということがわかりました。EIZOの技術力恐るべし。現状、格ゲーで勝てないのはプレイヤーの腕という結論になりました。

ただ、FS2333では、画面が黒く映るフレームがありました。FS2333では黒挿入による残像軽減があるのか、液晶パネルの性能のためかは不明ですが、XG27UQではそのようなフレームが映ることはなく、これが144fpsの液晶パネルと、60fpsの液晶パネルの性能差なのかと思います。黒挿入は、常に画面が点滅している状態のため疲れやすいとのことなので、黒挿入がなく残像が少ないのであれば優れていることになります。


↑左がASUS XG27UQ、右がEIZO FS2333(電源入っています)



モニターとしての満足度はかなり高いです。ただ、家庭用ゲーム機がHDMI2.1である中でHDMI2.1に対応していないのは、不満点であると言えます。
ただ、現時点ではHDMI2.1が必要なゲーム自体が家庭用ゲーム機ではほとんどリリースされていないので、XG27UQは約10万円の高価格帯モニターになりますが、必要となれば買い替えや買い増しをすればよいと思います。とはいっても、XG27UQも現在(2021年3月)は入手困難な状態です。

そして、すでにASUSから2021年1月に、PG32UQが第一四半期末に発売予定であるとアナウンスされています。PG32UQは、4K120HzでHDMI2.1対応している32インチモニターです。これは、家庭用ゲーム機にとっては本命な仕様であり、他社からも同じパネルを使用した同じような仕様のモニターが発売されると思います。しかし、おそらく高価格で、さらには品薄状態で入手困難が予想されます。じっくり待てるのであれば、これらのモニターが発売を待つというのもよいと思います。